不意打ち



 大きな音と土煙と共に、何かの影がゴブリンとタルタル(女)の間に入ってきた。

 「ふぅ・・・ 正に間一髪ってやつですか?」

 スライディングの姿勢から、ヒュームがゆっくりと立ち上がった。だが、左手一本で立ち上がったろうとしたので、途中でバランスを崩しそうになった。

 (俺の方も間一髪だな。もう少し深く貫通してたら、顔までイッてたぜ・・・)

 右腕に刺さったクロスボウの矢は、矢羽根の少し手前まで来ていた。

 「ダレダ オマエ」

 矢を装填し直したゴブリンは、さっきまで攻撃していたタルタルの少女ではなく、目の前に突然現れたヒュームに狙いを定めていた。

 「大丈夫か?」

 ヒュームは倒れているタルタルの少女に、目だけ振り向いて言った。

 少女といっても、本当にそうなのか定かではないのが、タルタルだ。

 背格好や容姿では、大人とも子供とも区別がつきにくい。実際、ウィンダスの酒場には子供のような顔をしたタルタルが酒を飲んでいたりする。

 その少女は見れば、冒険者の格好をしているのでそれなりの年齢なのは誰でも想像できた。そして、装備が貧弱なので、まだ初心者か駆け出しなのも分かった。

 (まだ若いな・・・ここコンシュタットのデビューは早いだろう・・・)

 「おい、ここからグスタベルグまでそう遠くない。ここは俺に任せて、早く帰れ。もう少し経験積んで、ここに来るんだな」

 タルタルの少女は、震えながら縦に首を振った。

 「あっ・・・血が・・・」

 震えて今にも消えそうな細い声で男の右腕を指差した。

 「ん? あぁ、こんなの怪我の内に入んねぇよ。こんなの心配してる暇があったら、さっさとグスタベルグ行きやがれ」

 男の既に体はゴブリンに向けられ、きつく叱るように少女に言った。

 (痛っっっ・・・)

 コンシュタットは、風の強いところで有名だ。点在している風車小屋が、それを物語っている。

 その強い風が刺さった矢に当たるたびに、男の体に電撃のような痛みが走った。

 (腕に力が入らねぇ・・・感覚が無くなってバカになってきてる)

 「ナンノ ツモリダ? オマエガ アイテヲ スルノカ? カタウデダケデ、おれ二勝テルト思ッテイルノカ?」

 「フッ・・・。何なら、左手も使わないでやろうか?」

 上から人を見下すような眼つきで、男はゴブリンに言った。

 (こんな安い挑発・・・やっぱり乗らないか)

 クロスボウを構えなおし、さらに狙いを絞り込むように、ゴブリンはフロントとリアのサイトを覗き込んだ。

 (クソ・・・。早く決着を付けないと・・・。痛みで俺の意識が飛びそうだっ)

 深々と矢が刺さった男の右腕から、ポタリ ポタリと血が落ちていた。時間が経てば経つほど、失う血の量が増えていく・・・。しかし、男には流れ落ちる血を感じることは出来なくなっていた・・・。

 (ヘタに動けば、狙いを後ろのタルタルに変えるかもしれない。ヤツが動いてから・・・‘後の先’を取りたいが・・・。さて、どうする・・・)

 「神よ・・・子なる我等に癒しの力を」

 タルタルの少女が、両手を組んで突然祈りを捧げ回復呪文を唱え始めた。先程まで震えていた声がウソみたいに、しっかりと声を上げて祈り、男の傷を治そうと近付こうとしていた。

 「バッカヤロー! そんなことしている暇があったら、とっととここから離れ・・・」

 ‘バツン・・・’

 男が振り返りタルタルの少女に怒鳴りつけた、その瞬間だった。

 ゴブリンも、このスキを見逃す訳は無かった。引き金を引く音と同時に、クロスボウの弦が弾け矢が打ち出される音がした。

 (クッ ヤロウ!!!)

 男は生きてる左手でマントの止め具を外すと、振り向きざまに矢を薙ぎ払う様にそれを脱ぎ捨てた。

 矢がマントに命中し、そのまま‘バサッ’と地面に落ちた。

 それと同時に、二人の前から男の姿が消えた。

 二人とも呆気にとられていた。

 ゴブリンから見れば、マントを脱ぎ捨てた時までは目の前にいた。しかしその時、一瞬だけ男の姿が、マントで隠れた。そして地面に落ちたとき、男の姿が消えていた。

 タルタルの少女から見れば、ゴブリンより近い位置にいたのに、一体いつ消えたのか分からなかった。

 彼女は男の声にびっくりしていまい、魔法の詠唱を途中で止めてしまった。その刹那、矢が放たれ彼女は両手で目を覆って、顔を伏せてしまった。そして、ゆっくりと顔を上げると、さっきまで確かに目の前にいた男が消えていた。

 「ドコダ! ドコニ消エタ!!!」

 ゴブリンはクロスボウを捨てると、携帯しているナイフを出して前や横のほうを切りつけた。

 しかし、虚しく空を斬るだけで、手ごたえなどはまるで無かった。

 「・・・ソウカ!」

 数回切りつけたところで、ゴブリンは何か閃いた。

 「ヤツハ 出血シテイタ。血ノアトヲ追エバ・・・」

 男がいた場所には、確かに腕からの出血で地面が汚れていた。そしてそこからは何処かに移動したような血の後が伸びていた。

 (姿ヲ消シタ時ハ驚イタガ、何テ馬鹿ナヤツダ)

 ニヤリと笑って、血の後を素早く目で追いかけた。

 だが、それは途中で止めてしまった。止めたというより、それ以上は、追いたくなかった。

 生唾をゴクリと飲み、顔から体から変な汗が噴き出してきた。

 「マ、マサカ〜〜〜ッッッ!?」

 ゴブリンは、振り向きざまに後ろに向かって切りつけた。

 だがそれも、空を斬るだけだった。

 「何処切ってんだ、お前・・・?それにおせぇよ・・・」

 次の瞬間、ゴブリンは首筋に冷たい何かを感じた。男の腕を目で追っていく。手首まで追えたがその先までは見えなかった。だが、冷たい何かの正体は分かっていた。それが分かったから、口を半開きにしてパクパクと震えた。

 「腕が痛ぇし、意識がもたないから一度しか言わないぞ」

 ゴブリンは、首を何度もカクカクと振った。

 「オ願イ・・・。助ケテ」

 「刃物の使い方を教えてやる。いいか?刃の根本を対象に当てて、一気に剣先まで引くことだっ!!!」

 「ヤメ・・・」

 男はゴブリンの言うことに、全く聞く耳を持っていなかった。そもそも聞いて動きを止めるつもりなどもない。

 ‘ガリィィィィィィ’

 硬い物を刃で切った時の独特の音が、コンシュタット高原に響いた・・・。

 体を2、3回ピクッっと震わせると、ゴブリンは傷口を上に傾け血を噴水の様にふきだして背中からバタリと倒れた。

 男もまた膝から崩れそのまま座り込んで、肩で大きな息をしていた。

 「ハァハァハァ・・・。ヤツがお馬鹿で助かった」

 自分のナイフを鞘に納めると、矢の刺さった右腕を見た。

 (流石にちょっとヤバイかも・・・)

 力も感覚も、とうに失っていた。よく見ると、色もドス黒くなってきているようだった。

 「神よ・・・子なる我等に・・・」

 少女が傷口に手を当て、回復魔法を唱え始めた。

 温かく優しい光が、右腕を照らし始めた。男はほんの少しの間だけ、その光を浴びると、かざしたタルタルの手を握って首を横に振った。

 「その力は、お前がグスタベルグに帰るまで取っておけ。その気持ちだけで十分だ」

 「でも、まだ傷が・・・」

 怪我の部分と男の顔を心配そうに見つめて、少女は言った。

 「大丈夫だ。俺が走ってここに来ただけで、俺には他に仲間がいる。もうじき追いつくはずだが・・・」

 男は、自分の走ってきた方向を見た。よーく見ると小さな点が手を振っているように見えた。

 「お〜い。マァァァーリィィィ」

 声の主はタルタルだった。小さい点の割りには、声は大きかった。今度は両手を振り飛び跳ねて自分をアピールしていた。

 「どうやら仲間が追いついたようだ。俺達は、これから沼を抜けてジュノに向かう。お前が成長して、どこかで会うことがあればパーティを組めるといいな。俺達の仲間には、お前のように専門的に白魔法を使えるやつがいないんだ」

 まだ心配そうに見ている少女に、‘マーリ’と呼ばれた男は笑顔を見せた。

 「チャチャ〜。遅いぞ、お前の他は何やってる〜?」

 本当は痛くて、そんな大きな声が出せないはずなのに、マーリは何事も無かったように左腕を振って‘チャチャ’と呼ばれたタルタル(女)に言い返した。

 チャチャはマーリの呼びかけに足を止めて、後ろを振り返り大きな声を出してまた叫んだ。

 「ララゥ〜、シャルル〜。マーリがいたよぉぉぉ〜」

 二人の仲間を呼ぶように腕で合図をした。そしてチャチャは、大きく息を吸い込むと両手を口に当てて、先程よりも大きな声で二人の仲間に叫んだ。

 「ララゥ〜、シャルル〜・・・。大変よ〜マーリが少女をナンパしてるわ〜。タルタルよタルタルの少女よ〜。やっぱりマーリはロ○コンでショ○コンだったのよ〜」

 仲間が来たので、その場にぐったりと倒れようと思ったが、別の意味で倒れてしまった。

 それからゆっくりと立ち上がると、伏せた顔を起こし、チャチャを鬼のごとく睨んだ。

 「てめぇ・・・誰が○リコンだってぇぇぇ!?それに、どこから○ョタコンが出てくる!?そんなこと言ったら、この娘が勘違いするだろうがよ〜!!!」

 今の顔はとても見せられる顔じゃないので、マーリは少女から顔をそらして、何度か顔を叩いた。

 (スマイル スマイル・・・)

 何とか笑顔を作ってみたが、『作り笑い』のぎこちないものだった。


 「何か、ずーっとキツイことばかり言ってすまなかった。勘違いしないでほしい・・・」

 少女は立ち上がったマーリを下から見上げた格好で、‘ウン’と言って首を振った。

 「分かっています。あれは私に対する・・・」

 「・・・俺は、ロリ○ンでもなきゃショタコ○でもない・・・」

 マーリはそう言うと、タルタルの少女に別れを告げて、チャチャと後から追いついてきた仲間の元へと走って行った。まともに走れる体ではなかったが、仲間にはあまり心配をかけたくないと思ってだ。

 (分かっています。あれは私に対する優しい言葉・・・)

 「いつか、必ず追いついてこのお礼をさせて頂きます。マーリさん・・・」

 少女は走り去るマールの背中に、深くお辞儀をした。










―あとがき―


 ヘタレな文章で申し訳ないです。何を書いてもこの程度なので、毎回申し訳ないです。

 もっと他の方の文章を読んでスキルアップをしたいです。でも時間が無かったりして・・・。

 物書きやって、私の現在の最終目標は「地元地方新聞に掲載される」ことです(笑) 賞金もそこそこ大きいし(笑)、何より掲載されると、そのあと自分がどーなるか気になるからです。

 そのためにも、書いて読んで勉強しないと・・・。

 あぁ 何だか本編と話がそれまくりですね^^;

 これからの展開は、ミッションやクエストが中心になると思います。思い出に残ったクエストやミッションしか書けなかったりすると思いますが^^;

 まずはとりあえず、オリジナルでw








 最後に

 ここに、とある掲示板に書いてしまったこの読み物のキャラ設定を残しておきます。

 走り書き程度なので、キャラが生きてくれば下記の設定と変わるかもしれません(笑)




Marlin ヒューム ♂ バス出身
↑と書いて‘マーリ’と読む。LSのリーダーだが、いささか良識に欠ける。
マーリ「最後の‘n’は発音しないんだ。覚えといて〜」

Chall エル ♂ サンド出身
 ↑と書いて‘シャルル’と読む。貴族の三男坊。跡継ぎの長兄、騎士団の次兄とがいる。貴族出身なため、いささか常識に欠けるw

Chacha タル ♀ ウィン出身
 ↑と書いて‘チャチャ’と読む。魔法の先生が‘大魔法使い’とか‘良家の出身’とか‘八頭身に変身する’とか噂の絶えない女性w 天然ボケでLSのムードメーカー。

Lalau ヒューム ♀ バス出身
 ↑と書いて‘ララゥ’と読む。LS内唯一の大人の色香を持つ。といっても、他に女性がチャチャのみなので、当然の結果であるw
他に唯一の良識人である。が、しかし、怒ってキレると一番タチが悪い。











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