出撃5分前



 青年は、コクピットシートに座ると、すぐに溜息をついた。宇宙(そら)に上がってから今まで、模擬戦と演習、シュミレーションばかりだった。

 この大きな戦闘が、青年にとって久方ぶりの戦いだったので、思わず出してしまった。

 「大丈夫か?」

 急に無線が入った。青年はコントロールパネルのスイッチを入れ、声の主の顔を映した。

 「アムロ大尉・・・」

 「キミは病み上がりで、実戦からのブランクもある。無茶はするなよ」

 心配そうな顔で、青年に話していた。自分にも経験がある。我が事のように、アムロは思った。

 「その通りだぞ。我々は、キミの活躍に大いに期待している。それだけに、キミをもう一度失いたくない」

 また別の無線が入ったので、モニターのスイッチを入れた。

 「艦長まで・・・。お二人とも心配性ですね。大丈夫ですよ。もうそんな無茶、出来ないですから」

 青年は、モニターの二人に苦笑いで答えた。

 「意味深だな、その笑い」

 青年の顔を見て、アムロは‘フッ’と笑った。

 「と、とにかく、ブリーフィングの時も言ったが、今回の戦闘は敵の大将が出てくるかもしれん」

 咳払いを一つし、細い目をさらに細めて、真剣な顔で言った。

 「大尉・・・いえ、シャア・アズナブルですね」

 「そうだ。もし、出てきたら・・・」

 艦長は軽くうなずいて、さらに言葉を続けようとしたが、青年に割り込まれてしまった。

 「わかってますよ、ブライト艦長。そのときはアムロ大尉にまかせて、俺は援護に回るんですよね。そのときは、ムチャさせてもらいますよ」

 モニターを通じてヘルメット越しに、青年の笑顔が見えていた。

 「くっ・・・どいつもこいつも、年を取っても性格は変わってない」

 無線の二人に聞こえないよう、小さな声でブライトはボヤいた。

 「・・・ともかく、二人の健闘を祈る。必ず帰ってきてくれよ」

 それだけ言うと、ブライトは無線を切った。

 (復活は嬉しいが・・・引きずり込まれるなよ)

 通話中は顔には出さなかったが、拭えない不安を感じていた。

 「相変わらずだな、その性格。それなら、大丈夫だな」

 もうじき発進なのに、アムロはまだ無線を繋げていた。笑顔が、とても嬉しそうだ。

 「アムロ大尉、それって変わってないってことですか?」

 笑顔のアムロに対して、‘キッ’と睨みつけるような鋭い目で言った。ヘルメット越しなのが、余計に迫力をアップさせている。

 「(うっ、ヤブヘビだったかな?)」

 アムロは、青年が『本気ではない』ことは分かっていたが、慌ててモニターを切った。

 「もう発進だからな。おしゃべりはここまでだ」

 その慌てぶりは、声からも分かった。青年はアムロのその態度に、少し腹立たしかった。

 「みんな、子供扱いして・・・。俺、そんなに変わってないかな?」

 青年は、昔の戦闘と、そのとき出会った二人の強化人間の少女の事を思い出した。

 〜一番カタパルト・デッキ、準備終わりました。いつでもどうぞ!〜

 整備兵の大きな声(もちろん、マイクを使っているのだが)の放送で、ふと我に返った。自分のとは反対側の(カタパルト・デッキへの)昇降口を見ると、もうアムロの機体が固定されており、エレベーターでカタパルトまで上がってる途中だった。

 「じゃあ、お先に」

 発進直前に、アムロは回線を閉じた。

 「リ・ガズィ一号機、アムロ・レイ、行きます」

 カタパルトから、アムロ機が勢いよく射出された。

 「(俺、また戦場に戻ってきてしまった。でも、あの時とは違う。あの時は、『成り行き』で戦争したこともあったけど、今度は自分の意志だ。地球を、思い出の地を守るためにっ!)」

 先程と同じ、強化人間の少女を思い出したが、今度は黒いマントを着たショートヘアの少女だけだった。

 〜二番カタパルト・デッキ、準備完了だ。二号機出すぞっ!〜

 その声と共に自分の機体が、エレベーターでカタパルトまで運ばれた。最後のまで、機体の側にいた整備兵が軽く手を振ってくれたのが、メインモニター越しに見えた。

 整備兵には見えないことはわかっていたが、青年は親指を立てて、それに答えた。

 ‘ガクン・・・’

 エレベーターが上昇し終わった。機体はそのままカタパルトに固定され、射出準備が完了した。

 「ブリッジ、いつでもOKですよ」

 青年は、無線を開いてオペレーターに呼びかけた。

 オペレーターも艦長に指示を伺うと、モニターに向かって『OKサイン』を出した。

 前を見ると、デッキの信号機が赤から青に変わっている。

 「カミーユ・ビダン、リ・ガズィ二号機出ます!」

 カミーユは強烈なGを感じながら、ラー・カイラムから発進した。

 「大尉、いや、シャア・・・あなたのやろうとしている事は、やっぱり間違ってます」

 カミーユはそう言いながら、機体のスロットルレバーを前に倒し全開にし、先に出撃したアムロに追いつこうとした。

 今 ロンド・ベル隊の二人のニュータイプが、ネオ・ジオンの作戦を阻止するため戦場へと向かった!









―あとがき―


 何でいきなりロンド・ベル隊なのか?
 とあるサイトで拝見した、一枚のイラストが原因です。
 「カミーユがロンド・ベル隊の服を着ている」イラストでした。
 アムロが着ている軍服(?)だったんですけど・・・
 めっちゃ似合ってました^^

 それで、イメージが沸いて、ほとんど即興で書きました。
 即興なだけに『駄文レベル』が通常の3倍に跳ね上がっています。(笑)
 表現力が乏しいです。イメージだけじゃ書けないですもんね・・・

 一応、私の設定では、Zの最後、カミーユは二人の強化人間(フォウとロザミア)に守られて精神崩壊を起こしておらず、復帰に時間がかかるほどの大怪我を負ったことになってます。
 ZZ終了後、怪我は治るのだが、エゥーゴ(または連邦)を離れ軍には戻らなかった。
 シャアの横暴(笑)な態度をみて、連邦に志願。念願かなって(というか完全に引き抜き)ロンド・ベル隊に配属される。

 ということになっております。

 こんなしょぼい設定だけは浮かぶんだよなぁ・・・。


 オマケ・・・(MA名以外は、オリジナルなところが多いハズ・・・)
 
 乗り換え機体

 アムロ・レイ

 リ・ガズィ一号機→Hi−νガンダム

 νガンダムのノウハウで得たデータを元に、完成したMS。
 混沌とした戦場を打破するための、連邦及びアムロの切り札的兵器。
 アナハイムの計画書がしっかりしていたこと、予算度外視でνガンダムクラスのMSをもう一機作っていたこと(これは、Hi−νガンダムの完成を急いだアナハイムと連邦の思惑もからんでいるが・・・)、νガンダムの余剰パーツ及び機体パーツを流用している為、ロールアウトまでの時間はほとんど必要としなかった。
 データ収集も、『大きな戦争』が始まった為、比較的早く集まったことが幸いして、最終決戦前にアムロの手に渡ることになる。



 カミーユ・ビダン

 リ・ガズィ二号機→量産型νガンダム(カミーユ・カスタム)

 同じく、νガンダムのノウハウで得たデータを元に、完成したMS。
 「νガンダムクラスのMSを、一般の兵士にも」
 というコンセプトで制作されたMS。
 通常は「インコム・ユニット」を搭載しているが、カミーユの為に急遽「サイコミュ・ユニット」に換装した機体。
  また、コクピット周り及び間接部分はνガンダム同様、サイコ・フレームになっている。
  結果、ほとんどνガンダムと同じ使用になっているが、ベースとなった機体が「量産型」  なので、若干の機体性能の低下、カラーリングの相違が見られる。
  カミーユの参戦、ロンド・ベル隊の配属が急遽決定したため、カミーユ用に調整したサイコミュの完成、またそのユニット自体の完成が遅れ、ロールアウトしたのはHi−νガンダムより少し後になる。
  しかし、最終決戦には間に合いアムロのHi−νガンダムと共に戦場を駆けることとなる。



 も一つオマケ・・・

 リ・ガズィの一機(アムロ機)は、劇場版同様ケーラさんに。二号機は『得意』の予備パーツとして使用(笑)




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