アクシズ宙域
カミーユは、確かに感じた。レーダーを見ると、識別信号がまだ点灯していた。
(くそっ 勘違いであってくれ・・・)
祈りにも似た気持ちで、その識別信号の元へと向かった。
今までも、同じような感覚を感じたことはある。だが、それはいつも不幸な結果だった。
「あぁ・・・クソッ・・・。ケーラさん」
カミーユは最大望遠でケーラ機を確認した。
ケーラのリ・ガズィは見るも無残な姿だった。四肢は完全に無くなっており、MS(モビル・スーツ)として、完全に機能を失っていた。
そのような戦闘機能を失っているケーラ機に、敵のMSがコクピットにビーム・サーベルを突き立てていた。確かにそれだと、識別信号を出している発信機を壊さない限り、レーダー上では、存在していることになる・・・。
「このっ!よくもケーラさんをっ!」
カミーユはウエポン・ラッチからビームライフルを外すと、フルオート・モードにスイッチを切り替えてトリガーを引いた。
「Zもどきを倒したと思ったら、こんどはガンダムもどきかよ!」
敵MSのパイロットは、そうボヤくと、サーベルの出力を落として、リ・ガズィから離れた。
「そんな長距離射撃、俺に当たるかっ!」
サーベルをしまうと、ショルダーアーマーの部分のファンネル6基を全て射出した。
「行けっ、ファンネル」
複雑な軌跡を描いて、ファンネルがカミーユの乗る量産型νガンダムを襲った。
「くっ・・・この感じは!?」
カミーユも、すぐさま6基のフィン・ファンネルを射出した。
「なっ・・・ファンネル!? あのデカいのは、放熱板じゃないのか。 だが、展開が遅いんだよ!」
敵MSのパイロットも、ガンダムがファンネルを展開した瞬間、何かを感じた。ニュータイプだから感じる、サイコミュを使用したときの波動のようなものを・・・。
敵MSのファンネルが、素早くガンダムを取り囲むと、全方位から攻撃を飛ばした。
「こいつを、ガンダムを倒せば、シャアに認められる。そしたらクェスだって・・・」
攻撃の手を緩めることなく、さらに追い討ちとばかりに、今度はビーム・ガトリングガンを取り出すと、νガンダムに向けて容赦なく撃った。
「なんて速射性だ。やるな、敵の新型!」
何とか攻撃をかわしてはいる。が、いつまでも耐えられる攻撃ではない。
「これならっ!」
4基のフィン・ファンネルを三角錘状に展開させた。
「なに!?」
敵のファンネルとガトリングガンの攻撃を、目に見えないバリアが全て弾いた。
「I・フィールドバリアか!?」
敵パイロットは、確信がもてなかった。I・フィールド発生装置は、MSが携帯できる大きさではないし、出力も大きい。だが、ビームを跳ね返したので、それしか考えられなかった。
I・フィールドバリアとは、電波を吸収してしまうミノフスキー粒子を応用した技術であり、同じミノフスキー粒子を利用したビーム兵器を無効化してしまうバリアのことである。
技術的には、大型機動兵器であるMA(モビル・アーマー)には、その発生器が搭載が可能である。
現に一年戦争では、ジオンのビグ・ザム、グリプス戦役ではティターンズのサイコ・ガンダム及びサイコ・ガンダムMk−Uが搭載していた。
「量産型だからといって、νガンダムを甘く見すぎたなっ!」
カミーユは一気に間合いを詰めると、左腕のシールドを縮ませた。そして、そのまま右肩のビーム・サーベルを引き抜いた。
サーベルの赤い閃光が、敵MSのガトリングガンを真横に両断し、その銃口を黙らせた。
「ちぃ・・・ やるなガンダム!」
敵MSは、ガトリングガンを手放すと、爆風に備えてシールドを構えた。
カミーユの量産型νガンダムも、シールドを構えて、ガトリングガンの爆風に備えた。
「くっ・・・」
思った以上の衝撃が、カミーユの機体を襲った。縮めたシールドが完全に展開していなかったため、その分衝撃が大きかった。
「フッ 次への行動が遅いぜ、ガンダム!」
敵のMSは、背面のウエポン・ラッチからビームライフルを取り出した。機体をちょうど爆風と一直線になるように移動させて、銃口をガンダムに向けて構えた。
「もらったっ!」
ガトリングガンの爆風で完全に視界が遮られたガンダムを、敵MSはしっかりとロックオンした。
‘カチッ・・・’
敵パイロットは、トリガーを引いた。確かに引いた・・・。
‘ガクンッッッッ・・・’
「!?」
機体を、思った以上の衝撃が襲った。ガンダムを撃破した爆風ではない。機体自身の直接的な衝撃だった。
‘ビーッ ビーッ・・・’
コクピット内で、警告アラームが音を出した。コクピット内で赤いランプが点灯し、機体が異常であることを教えてくれた。音とランプをを止める為に、パネルで破損箇所を確認して、その部分を指で触れた。
「何っ!?」
確実にライフルのトリガーを引いたはずの腕が、肘から先、完全に無くなっていた。先程パイロットが受けたの予想以上の衝撃は、腕に直撃を受けたときのものだった。
「何が!? 一体どこから!?」
パイロットは、非常に焦った。攻撃の方向が、全く感じられなかったからだ。
ニュータイプであるということは、MSの操縦が上手いだけではない。その特殊な感覚は、サイコミュを動かし、また認識力の拡大により、相手の動きの先を読むことが出来る・・・。
故に、敵バイロットが‘攻撃の方向が全く感じられない’というのは、完全に自分の見落としか、『相手が自分以上のニュータイプ能力を持っていた』ことになる。
もちろん、戦闘中に気を抜いてしまうようなマヌケなパイロットではない・・・。
「ま、まさか・・・あれか!?」
全天球モニターの足元を見ると、ファンネルが1基、上を向いてこちらを狙っていた。位置を考えても、あのファンネルが腕を吹き飛ばしたやつだった。
「ちぃ ちとマズイな」
一時撤退をするために、次の行動に出ようとしたその時だった。
「動きが一瞬遅れたな。戦場での迷いは、死を意味する。俺はお前のようなヤツに容赦はしないっ」
カミーユのνガンダムが、ビーム・サーベルを抜いて、一気に間合いを詰めた。そしてそのまま、敵MSを切り裂き、横へと走りぬけた。両断とまではいかないが、胴を横一文字に斬った手ごたえは、完全にあった。
「バ、バカな・・・俺が、ギュネイ・ガスがぁぁぁ・・・」
後ろを振り返り、機体の爆発を確認すると、四肢が無くなったケーラ機の元へと向かった。
脇の下に両手を入れて、抱きかかえるようにして、カミーユはロンド・ベル艦隊旗艦「ラー・カイラム」へと向かった。
「コクピットを完全に・・・もう・・・」
改めてケーラ機の状態を理解した。間近で見ると、その破損状況の酷さが、だんだんと見えてきた。
「あのパイロット・・・。あれは間違いなく、強化人間・・・。強化人間の悲しみをしってるあなたが、なんでこんなことを・・・。シャア・アズナブル、やはりあなたの考えは間違ってる」
怒りと悲しみで、カミーユの目から涙がこぼれた。
―あとがき―
話の構想自体は、以前よりありましたが、なかなか着手することはできず・・・。
原因は、某有名RPG11にハマったことが(汗)
いつもの事ながら、相変わらず文章がヘタなので今回もMSネタでいきいと思います。
量産型νガンダム
伸縮型シールド
通常の物とは違い、伸び縮みするシールド。最大限に縮め、さらに180度回転させるこ
とにより、手首が自由に使えるようになる。
これにより、ビーム・サーベルの二刀流など、より自由な戦いが出来る。
しかし、複雑な形状と多数の接続部品により、通常のシールドよりも重い物になってし
まった。
なお、シールドの内側には、予備のビーム・サーベルが2本装備されている。
ギュネイ専用 ヤクト・ドーガ
ビーム・ガトリングガン
ビーム・マシンガンよりも速射性にすぐれた銃。当然威力も高い。通常兵器では火力不
足気味だったが、これにより突破力と破壊力を得ることが出来た。
しかし、銃身全体が長いので、小回りが利かないことと、一気に接近され内側に入られ
ると弱い・・・・。
しかし、一斉射撃を喰らえば、戦艦の一隻は簡単に撃墜できる破壊力は、弱点を差し
引いても、大きな魅力である。
P.S.
もう一個ぐらい、Ifの話があるんですが、実力が伴わない・・・^^;
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