好きなモノ
今、あたしは、彼の車に乗って何処かへ向かっている。
いや、正確に言えば、『彼の父』の車に乗って だ。
えっ!? ツッコむところが違うって?
まぁ、いいじゃない そんなこと(笑)
〜見せたいものがあるから、会いたい。家の前で待ってる〜
彼のこのメールで、あたしは少し不安になってしまった。
(まさか、この前の仕返し?でも、彼そんな性格じゃないし・・・)
ついこの前は、無理な時間に待ち合わせをセッティングして、そしてそのまま『天気が良いから』といって無理矢理デートに誘ったりした・・・。その他にも、思い当たる節が沢山ありすぎて分からない(汗) あたしが彼にしてきた事は、あたしの『我がまま』そのものだから・・・。
「ね、ねぇ・・・何処に行くの?」
不安に押しつぶされて、あたしは彼に行き先を聞いた。
「い・い・と・こ・ろ♪」
彼はそれだけ言うと、満面の笑みを浮かべた。
(ちょっと、何〜!? ま、まさかホテル〜!?)
あたしは、ドキドキしてしまい顔が赤くなってしまった。
(心の準備とかまだ全然・・・・)
ちらりと彼の顔を見ると、真っ直ぐに前を見て、真剣に車を運転していた。
「いつ、免許を取ったの?」
「ん? 18歳になってすぐだから、ついこの間」
「・・・(大汗)」
あたしは、本当に不安になってきた。
「あ、あたしも前見てるわ」
今、前を見て、気が付いた。この道はどう考えても『山』の方に向かっている道だ。この先には、別段デートスポットがある訳でもなく、美味しい料理のお店がある訳でもない。あるのは、地域の活性化の為に、自治体が誘致した工場、つまり「工業団地」が広がるだけである。
(ま、まさか、車の中!? イヤ〜ン♪)
あたしは顔を真っ赤にして、頬をおさえ彼とは反対側の助手席の窓を見た。
「ふぅ・・・到着」
彼がそう言って車を止めた。 あたしが照れて顔を真っ赤にしている間に、到着したらしい。
(えっ、もう!? まだ、心の準備が)
あたしは、前に向き直した。
「うわぁ〜 綺麗〜」
車を止めたところは、ちょうど丘のようになっていて、眼下に街の夜景が海の方まで広がっていた。
「すごい綺麗・・・工業団地だし普段は絶対に行かないから・・・全然知らなかった」
街の夜景を見てうっとりしているあたしに、彼は‘ちがう、ちがう’と言って、肩をたたいてきた。
(何が違うのだろう・・・?)
彼は何も言わず、ただ人差し指を上に向けているだけだった。
(???)
あたしは、訳も分からず、車の天井を見た。
あたしのその行為を確認すると、彼は手際よくサンルーフを開けた。
「!!!」
あたしは、驚きと感動で言葉が出なかった。
「すごいでしょ? 冬はね空気が澄んでるから星が綺麗に見えるんだ。ちなみに僕が一番好きな季節でもある」
「冬の星空なんて、真剣に見たの初めてよ・・・」
自分で言ってて、少し恥ずかしくなった。今までこんな綺麗な星空に気が付かなかったことに。
「街中だとね、結構気が付きにくいよ。街灯や街明かりで、星が見え辛いから。その点、僕達の住んでいるところは、山に近いからね。少し街から離れて空に近付けば、いつでも見られる景色なんだよ」
「それって、田舎って意味じゃない?」
あたしはいたずらっぽく笑って言った。
「そうとも言うね」
あたしの、一番大好きな笑顔をみせて言った
「外に出てごらん。もっとすごいよ」
彼がそういうので、私は車の外に下りて、空を見上げた。
彼の言うとおり、本当にすごかった。
まるで星の海の中に漂っているようで、あたしと満天の夜空が一体になった感じだった。
「あっ・・・」
あたしは、バランスを崩してしまった。この不思議な感覚が、あたしを酔わせてしまったようだ。
「大丈夫?」
彼が倒れないように、あたしを支えてくれた。
「ねぇ、どうして・・・」
彼の優しさに怖くなって、聞こうとしたが、答えを聞きたくなかったのでそれ以上言うのを止めてしまった。
あたしは、彼の一生懸命でピュアなところが好きだ・・・。でも、あたしは彼に我がままばかり言う・・・最低な女だ・・・。
「う〜ん、免許を取って、一番最初に乗せたい人がキミで、一番見せたいモノがこの夜空だから・・・。こんな答えじゃダメ?」
(えっ!?)
心を見透かされているようで、もっと怖くなった。あたしは、慌てて彼の顔を見ると、空を見上げたまま、顔を真っ赤にして照れていた。
「は、恥ずかしいから、な、何度も言わないよ」
彼は、ずっと空を見上げ、あたしの顔を見ようとしなかった。多分、目を合わせられないほど、本当に恥ずかしいのだろう。
(よかった。彼もあたしのこと、好きなんだ)
付き合ってから長いけど、(子供のころからの腐れ縁ってやつ?)彼から聞いたのは初めてかもしれない・・・。
あたしは安心した。安心したら、今度はあたしの気が持たなくなってしまった。
とにかく、この雰囲気、状況を切り抜けたかったあたしは、彼の腕を掴むと、無理矢理絡ませた。
「さ、寒いので、しばらくこのままでいます。文句ある?」
目一杯、強気で言った。
腕から伝わる彼の鼓動が、一瞬早くなったような気がしました。
―あとがき―
なんだかなぁ・・・(阿藤海 風、笑)書いてるうちに、彼女は『女王様』っぷりが無くなっているし、彼は積極的な人になってるし・・・。キャラ変わりすぎや〜(汗)
でも、強気な人って、彼のような優しさに弱いような・・・。中島みゆきの歌にもそんな歌詞があったような気が・・・?(汗)
彼は、彼女の在るがままを全て受け止めているから、彼女のどんな我ままも大丈夫なのだと思います。彼は『あたし』のことが好きだからねぇ・・・。
逆にあたしは『彼』の優しさが、怖くなってくるでしょう・・・。でも、あたしは『彼』のことを愛しています。(想いの深さは、『彼』以上)
だから、破局にはならないと思う。何つったって、「相思相愛」ですから(笑)
うーむ・・・えらいリアルな話になってしもた。(笑)
この先は、私にも分かりません・・・。いい曲があれば、また書きたいです。(駄文ですが、笑)
PS
今回、のプロセスはTMネットワークの『FOOL ON THE PLANET』の1番の頭の部分です。
ファンの人が見たら、叱られるなぁ(大汗)
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