レーベの街

 結局、先の戦闘で街への到着が遅れてしまい、その日は野宿で一泊するハメなった。

 それがあるものだから、一行はレーベの街に着くと、まず一番に宿を確保した。

 テツとナカムラは騎士団の訓練の一環に、「野宿」も入っている為、大して苦では無かった。

 が、ちせとアケミには「二連続」は、さすがに辛そうだった。

 宿を確保すると一行は、次の目的地『誘いの洞窟』の情報を集める為に、二手(ちせ&アケミ、 テツ&ナカムラ)に別れることにした。





 ・・・・・・・・・・・・数時間後、宿屋一階の酒場・・・・・・・・・・・・





 「で、結局まとめると、『洞窟はこちら側の入り口でふさがれていて、奥には進めない』ってこと!?」

 「アケミのまとめてくれた通り、こちら側の入り口が岩でふさがれているらしい・・・。天井部分の岩盤が崩落したのが原因のようだ」

 もう少し詳しく説明を、テツは眉間にシワを寄せた渋い顔で言った。

 「じゃあ、あたし達、ここで足止めですか?」

 これ以上、話が進まないことと、レーベより先に進めないことにイライラしていた。

 「アケミ、あんまり怒ると・・・おなか空いてるの?」

 立ち上がっているアケミを、イスに座っているちせが心配そうな顔で見つめた。

 「だぁ〜 もう、ちせったら」

 一気に力が抜けて、ドカッとイスに座り込んだ。しかし、そのちせの一言で、アケミの表情からイライラが消えていた。

 「撤去作業も、あまり進んではいないようです。数日やそこらの岩盤の量じゃないようです」

 ナカムラが、現在の洞窟について説明した。

 「こういうとき、なんか、こう魔法でパパッと・・・」

 両手で口を慌てて押さえると、言うのをそこで止めた。そしてチラリとちせの表情を伺った。

 (魔法・・・シュウちゃん今何してるかなぁ・・・)

 ボーっとしていた目は、焦点が合ってなかった。

 「ゴメン ちせ・・・。余計なこと言って」

 アケミは、ペコリと頭を下げた。

 「えっ!? う、ううん、大丈夫」

 ちせは両手を振って、笑って答えた。

 (笑顔が硬い・・・。全然大丈夫じゃないじゃないか。本当にゴメン、ちせ)

 口が滑ってしまったことを、本当に悪いと思い、アケミは心の中で謝った。

 「現在、具体的な解決策が無い以上、足止めは硬い。しかし、止まっている場合じゃない・・・」

 テツはイラ立ちを露にした。またも、眉間にシワが寄っていた。

 「・・・あるよ。洞窟を抜ける方法が・・・」

 部屋の隅の方から声がした。一同は一斉に声のした方向を見た。

 声の主は、イスに座ってはいるが、体はうつ伏せになっており、テーブルに倒れているような格好だった。

 「・・・誰だ!」

 ちせ達が警戒している中で、テツが最初に口を開いた。

 周りに空気が、一瞬にして重くなった。ロレツの回っていないその男の口調、そして姿は、誰が見ても怪しかった。

 「誘いの洞窟を通る方法があるんじゃ」

 男は先程から、うつ伏せた状態のまま、ちせ達に顔を合わせず壁に向かって言っていた。

 「寝言かな・・・?」

 ポツリとアケミはつぶやいた。

 「わしゃ〜 起きとるわい!」

 酒場の外まで聞こえるくらいの大きな声だった。

 「ちなみに酔うてもおらんわい」

 誰もそんなことは訊いていないのだが、男はそう言って体を起こし、初めてこちら側を向けた。

 別段、顔も赤くは無く意識もしっかりしているようだった。男の言葉通り、酔っているようには見えない。

 「・・・本当に洞窟を抜ける方法を知っているんですか?」

 体の半分をアケミの後ろに隠して、ちせは恐る恐る怪しい男に話した。

 「何もそんなに恐がらんでも・・・。まぁ、いきなりじゃったからの。それにこんな格好じゃからのう」

 怪しい男は、自分の姿を足元から見直して言った。

 男の服は雑巾のように汚れており、何日も洗濯していないような感じだった。ボサボサの髪も、散髪を全然していないような印象をうけた。

 「そのお嬢さんの言う通り、わしは本当に知っておる。それも根本的な解決策をな」

 男は‘ニヤリ’と笑ったが、すぐに落ち込んでしまった。

 「正直に言えば、この『方法』事態、わしの願いになるんじゃ。すまんが話を聞いてもらえんか?」

 ちせ達に深く頭を下げ、男は懇願した。








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