夏の思いでは人の夢と書いて儚い



  (ん・・・)

 艶っぽい声。それは、三度目の寝返りだった。

 三度目・・・。眠りながら寝返りの数を数えていられるなんて、あまり普通じゃない。至って
普通で、ノーマルな人間なので、この状況は異常だった。

 そう。これは寝返りではなかった。眠れないから、姿勢を変えただけだった。艶っぽい声はおまけで、気を紛らわせるための‘ネタ’にすぎなかった。

 ボーン・・・

 別室の振り子時計が、また1回だけ鳴った。寝床についてから1回しか鳴らないのを、これで3回連続聞いた。

 (いつからだろう・・・こんな体になったのは・・・?)

 少なくともここ数年は、夏の暑さで眠れない夜を過ごしてきている。『寝不足で、次の日が辛い』という日々を毎年繰り返している。

 (そういえば)

 思い出した。あれは、高校生の夏休みのときだった。夜中を過ぎても眠れなくて、『起きてるのもなんだから』と宿題をやったことを。そしてそんな日々が一週間ぐらい続いて、お盆前の登校日までには、ドリルや課題系の宿題が終わっていたことを。ただ、一番の難題である自由研究を除いて。(笑)

 (あのときは、朝4時や5時に眠っても10時には起きていたなぁ)

 なぜ10時かといえば、見たいアニメが放送していたので、最低でもその時間には起きようとしていた。(爆)

 (4時、5時の就寝なんて、もう無理。明日がもっと辛い)

 そんな無茶が出来る、夏休みが恋しくなった。

 (その時からかな・・・? そしたらもう10年超えてるか・・・)

 過ぎ去った若かりし時と、現在が入り混じって、背中がむず痒くなった。

 (やめ やめ!)

 明らかに心は、干支が一周するくらい前の若かりし時間に囚われていた。(笑)

 (羊を数えるってのも試したけど、あれもね・・・)

 よく何かの話で、羊を数百、数千まで数えているシーンがあるが、あれはウソだ。限りなく不可能に近い。

 実際、「羊が〜」と数えると、100匹〜150匹ぐらいはなんとか数えられた。だがその辺りになると、噛んだり、とちったりして数え間違いをしてしまう。そうなると、‘単純作業’のため『あれ?いくつまで数えたっけ?』と前後の数字を忘れてしまう。そして、最初から数えなおし・・・。

 この無限ループ、2〜3回なら何とか耐えられるが、それ以上はもう精神の問題だ。千まで数えられる人は、おそらくよほどの持ち主なのだろう。

 (でもまぁ、それだけの精神力があっても、寝ることには回せないなんて辛いねぇ・・・)

 その失敗からこの方法は、全く試さなくなった。

 (こうなったら、最後の手段かな?)

 と思いつつも、この方法は未だに試したことがない。この方法は今眠れない辛さよりも、‘明日の朝、疲れが取れていない’という可能性とリスクのほうが大きいため、使ったことのない正に禁断の手段だ。

 (・・・ダメ。寝酒だけはやっぱり)

 『寝不足+寝酒で疲れが取れてない+酒くさい』

 このトリプル・アタックは、朝ギリギリまで寝ているとかなりキツイのは、詳しく説明しなくても十分理解出来るだろう。

 酒くさいのをとるためにシャワー等をする時間だって、朝の睡眠時間に当てたいくらいなのだ。

 結局、最後の手段を思いついてから5分もしない内に、脳内会議は終了。結果は言うまでもないだろう。

 (明日のことを考えようか? それとも・・・)

 それとも、物書きのはしくれだから、話のネタになるようなことを考えて眠るようにした。

 ボーン ボーン・・・

 今度は振り子時計が2回鳴った。

 眠気の勢いは、まだ来ない。今夜もまだ‘寝ること’との格闘は続きそうだ・・・。










―あとがき―


 皆さんは、暑い夜、どう過ごしていますでしょうか?

 眠れない夜って、辛いですよね^^; 私は何故だか、未だに夜眠れないでいます。

 9月に入って、涼しくなってきたにもかかわらず、昼間は相変わらず暑いです。私の眠れないのは暑いだけじゃないのでしょうか?^^;




 オリジナルとは、難しい物ですね。

 慣れない文章を書くと、ショボい内容がよけいにショボくなってしまいました。

 何事も、センスってあるんだなぁとつくづく思いながら、今日も何となく眠れない夜になりそうです・・・。

 

 2005/09/14(水) 雨が降って涼しげなのに眠れない予感な夜





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