SUNDAY



 彼女の言葉に、彼は口に含んだコーヒーを思わず噴き出してしまった。

 「な・・・何を突然!?」

 ‘なんで私に告白したの?’

 それが彼女の言った言葉だった。誰だって藪から棒にそんなことを聞かれれば、驚いてしまうのが普通だ。彼だって例外ではない。その彼は、噴き出したコーヒーをティッシュを使って拭いていた。彼女が部屋に来るということで、昨日は気合を入れて(いつもは掃除をしないようなところも念入りに)掃除したのに、一発で台無しになってしまった。

 「な、何もそんなに驚くことはないだろ!」

 (聞いた私のほうが恥ずかしいよ・・・)

 彼女は怒ることで、照れてる自分を誤魔化してみせた。

 (ううっ・・・逆切れですかぁ?)

 彼女がそんな行動をとったので、彼は腰を引いて一歩さがった。彼女は、‘早く答えて’と言わんばかりに彼をじっと見つめていた。

 (うううっ・・・)

 彼は一度体勢を起こして、手にしていた床を拭いたティッシュをゴミ箱に捨てた。そして、そのまま流れるようにテーブルに置いてあるビデオのリモコンを操作して、彼女と見ていた映画を一旦止めた。

 「・・・前から好きだったし、ずっと想ってたから」

 顔はテレビの方向を向いたままで、彼女とは目線を合わさなかった。彼は告白の時と同じことを、今彼女に言った。彼にとってやはり(いや、一般男性ならだれでもそうかもしれないが・・・)恥ずかしく、1回目とは違って彼女の方を見て改めて言うことは出来なかった。

 (違う 違う。そんなんじゃなくて・・・)

 彼女は下唇を噛んで目を伏せた。

 (やっぱり聞くんじゃなかった。でも・・・)

 でも、彼女は聞きたかった。聞かずにはいられなかった。

 ‘何故 私なんだろう?’ ‘本当に私でいいの?’

 彼の告白を受け止めても、彼女はそんな気持ちが拭えなかった。疑問が積み重なり、次第に大きくなり、それが不安に変わった。

 ‘本当は妹と勘違いしたんじゃ・・・’ ‘妹に近付く為に私を利用してるんじゃ・・・’

 彼女には双子の妹がいる。彼女は、真面目で何事にも動じず、どんな時も冷静に対処できる性格の持ち主である。妹の方はというと、明るく、誰とでも仲良くなれ、思ったことをすぐ口にするタイプである。その性格の違いから、彼女のほうは少々近寄りがたい印象になり、妹は男女問わず人気者である。二人とも美人なためラブレターをもらうが、量が圧倒的に多いのは妹のほうである。(ちなみに、女性からもらう量は彼女が多い 笑)

 不安は積もり、そしてそれはさらに不信を招き、彼と自分自身を信じることが出来なくなってしまった。

 彼は彼女のほうに目線を戻すと、顔を伏せ肩を震わせている彼女に驚いた。

 (怒ってるのかな? それとも泣いてる・・・?)

 ‘原因は自分にある’

 彼はそう思った。優男の彼は、一見しただけではそうは思えなが、思った以上に責任感が強い人間なのだ。(だから時々、やっかいごとを抱えては悩むことが多いことが難点)

 ‘フゥゥゥー・・・’

 大きく息を吸い込んで、肺にたまった空気を彼は全て吐き出して言った。

 「僕はね、君の妹さん思いのやさしさと、時々見せる綺麗な笑顔が好きになったんだ。それで、妹さんのことを手伝っていたりする【君を手伝う】ことが出来れば、君の手助けになるんじゃないかと思って・・・。でも、ほとんど手助けになってなかったね。むしろ、僕が邪魔してたみたいでごめん」

 彼は、ペコリと頭を下げた。

 彼女は、まだ目を伏せたままだった。

 (だからあんなに私が‘いいよ別に手伝わなくても’って言っても、手伝ってくれたのか)

 「でも、第一印象が最悪だったでしょ・・・。断られたら、綺麗な笑顔どころじゃなかったんだよね」

 ‘アハハ’と笑って後ろに少し反り片手でバランスを取った状態で、頭を‘ポリポリ’掻いて言った。

 (ウソは言ってない。彼は、ウソがつけない人だってことは知ってるから・・・)

 「今はこの気持ちを証明することは難しいかもしれない。でも、いつか必ず・・・こんな答えじゃダメかな?」

 (私の思い違い 私の考えすぎ・・・。私って最低だっっっ!!!)

 「やっぱり答えになってないかな?」

 彼女に笑顔を向けて言った。その問いに、今まで伏せっぱなしだった彼女が首を左右に振って答えた。

 (えーっと ダメって事ですか?)

 「ごめんなさい・・・私ヘンな質問をして。どうかしてたみたい」

 彼女はやっと顔を上げた。それから眼鏡を外すと、手で左右の目元を拭った。

 (泣いてたの・・・か?)

 彼は自分を責めた。彼女が何故泣いていたのか、彼には分からなかったからだ。ここには、彼と彼女の二人しかいない。涙を見せることが少ない彼女を泣かせてしまったのは、当然自分にあると改めて彼は思った。彼は立ち上がると、さっき床を拭くのに使ったティッシュの箱を持って彼女のところまで行った。

 (理由はともかく、女の子を泣かせたなんて最低だ・・・)

 「ごめん。僕がわる・・・」

 「ううん。あなたじゃない。嬉しいのよ。あなたの言葉に・・・だから」

 彼女は、眼鏡をテーブルの上に置いて彼が持ってきたティッシュを‘ありがと’と言って受け取った。そして2枚ほどティッシュを抜き、目に当てて涙を拭いた。

 「でも、さっきのあれ・・・本当に答えになってないわね」

 彼女は‘ウン ウン’と2〜3回首をオーバーに動かした。今まで本当に泣いていたのか? と思うくらい、彼女は急に元気に復活した。そして・・・

 「今、証明してみせて」

 彼女はにっこり微笑むと、また目を閉た。

 (えー・・・マジデスカ?)

 彼女の大胆な行動に、彼の体は石像のように固まってしまった。彼を今遠くから見る第三の目があるとすれば、[!?]の一組のマークが3つほど浮かんでいるに違いない。

 目を閉じた彼女は、顔を少し前に突き出していた。その格好は、ニブい彼でも用意に答えが分かった。








―あとがき―


 今回、プロットだけは速攻でした。といって、またある歌を参考にしたのですが^^;

 まぁ、参考の歌は作中に堂々と書いてありますから^^; 歌のファンと歌っている歌手の皆さん、ならびにこの歌がテーマになってる作品のファンの皆さんごめんなさいm(__)m

 なお、登場人物のモデルも○○○ー(彼)と○○○ー(彼女)です。(笑)

 『○だけじゃ分からないじゃないか〜』

 という声もあると思いますが(っていうか読んでる人がいればこんなツッコミもあるが、笑)
私がとあるキャラクターをIF世界でくっつけてしまったので、それを少々アレンジを加えて使いました。何せ一番好きなカップルですから^^






 P.S.

  あぁぁ・・・今更なんだけど、なんで恋人とかカップル物を書いてるんだろ。自分自身、異性の方とそこまで行った事無いのに(爆)









書庫へ戻る  お辞儀しているメイド

 読んでいただき有難うございました