「鈴」について
 神社では、「鈴」がよく目につくかと思います。拝殿入口に吊してある大鈴を始め、巫女が舞いを奉納するときにもよく鈴を手にしています。また、交通安全などのお守りや破魔矢(守護矢)などにも小さな鈴がついていますよね。
 古来より鈴には「邪なるものを祓う力」があると考えられてきました。注意すべきは、鈴そのものにではなく、「鈴の」に力があるということです。拝殿前の大鈴は鳴らさなくてはお祓いの意味がないのです。確かに、あの大きく厳かな音を聞けば、身が引き締まって邪心や邪霊は吹き飛んでしまいそうです。交通安全の御守りの鈴も、車内に吊せば振動で音が鳴ります。そう、車内の邪なるものを祓うためです。そういった意味では、鈴付き破魔矢もちょっと手荒に振り回すくらいのほうがよいのかもしれませんね。
 もうひとつ。鈴の音には「心を引きつける」力もあると考えられました。奉納舞などで巫女が手に持ち鳴らす鈴は、こちらの意味です。澄んだ鈴の音で神様の御霊(みたま)を引きつけ、御霊の昂揚を期待し、より大きな御神徳を得ようというのでしょう。
 参拝時に大鈴を鳴らすのも「神様の御霊をお呼びするためである」と説明される神職の方も多いようです。確かにそういった意味もあるのでしょうが、その場合は少なくとも澄んだ美しい音色の鈴に限っての話でしょう。大きな鈴(坪鈴)は「お祓い」、小さな鈴は「御霊を引く」と憶えておくとよいかもしれません。実際に大きな鈴と小さな鈴の両方を吊している神社もよく見かけます。両方の意味でそうなさっているのでしょう。