神様の「けんか」の誤解
 よく「神様がお互いに喧嘩をされるからやってはいけない」という話の真偽を尋ねられます。確かに自分の身のまわりで神様に喧嘩をされたのでは大変です。でもこの質問の回答は単純明快です。神様が互いに喧嘩をなさることはありえません。仮に御利益の全く正反対の祈願を異なる神社でなさったとしても(例えば同一人物との「縁結び」と「縁切り」など)です。もちろん、そのこと自体が神様に対して失礼なことですからやってはいけないことですが。そもそも「喧嘩」などという低次元な争いごとに神様がお力を使われるわけがありません。
 「神様の喧嘩」は心ない人が神様に失礼なことをしないように考え出された方便といえます。「神棚と仏壇を向かい合わせに置いてはいけない。神様と仏様が喧嘩をなさるから。」というのがその典型です。これは神棚と仏壇が向かい合わせだと、片方にお参りしているとき、どうしてももう片方にお尻を向けてしまいます。ですから向かい合わせは神仏に対して失礼になるのです。これを理屈抜きで言い表したわけですね。ちなみに「同じ部屋に神棚と仏壇を置いてはいけない」とも言われるようですが、これは気を遣いすぎです。互いが真正面を向き合っていないのであれば問題なしです。
 また、「異なる神社のお守りを持っていると喧嘩をなさる」というのもあります。これも同様に心配は無用です。ただし、いろいろなお守りを5つも6つも持っているというのでは話は別です。受験に備えて「学業成就」と「健康守り」と「交通安全」を持つというのはわかりますが、異なる神社の学業成就守りをいくつも持ったりするのは感心しません(せめて3つ以内に抑えましょう)。心が分散してしまうので「過ぎたるは及ばざるがごとし」になってしまいます。
 最後に神職として一言言わせてもらえれば、「神様の喧嘩は方便だとしてもあまり褒められた方便ではありませんね。」