心
「じゃあ、行ってくるから、店番 たのんだよ」
グレミーは、店の店員であるプルとプルツーに言った。
「はーい。行ってらっしゃ〜い」
プルが元気に答えた。いや‘元気’というよりも、それはプルの持つ‘明るさ’だった。店の雰囲気がいつも明るいのは、プルの持つその性格が、大きく影響しているのは言うまでもない。
「で、どこ行くの、グレミー?」
グレミーもプルツーも‘ズル’っとした。この天然さもプルが持つ憎めない性格の一つなのだが・・・。
「お前は何も知らないのか?」
あきれた口調でプルツーが言った。
「まあまあ、プルツー・・・。私はこれから『おいしいコーヒーのいれかた』の講義・・・『利き酒』会みたいなものかなぁ?まぁ、コーヒーだから『利きコーヒー』になるのかな?とにかく、そんなような話を聞きに行くんだ。駅前の喫茶店『風見鶏』のマスターのコーヒーは・・・」
「グレミー、それ以上の説明は・・・?わかったか、プル?というわけでグレミーは忙しいのだ」
「は〜い」
返事したプルは、ちょっと‘ブスッ’としたふくれっ面だった。自分だけ知らなかったのが、おもしろくなかったらしい。
もちろん、グレミーは前もって二人には伝えたのだが・・・。プルは忘れてしまったようだ。
「グレミー、帰りは遅いのか?」
「いや、日が明るいうちに帰って来るつもりだけど・・・何かあったのかい?プルツー」
プルツーが少し不安げな表情で、グレミーに聞いた。グレミーは、それに気づかず、普通に答えた。
「何でもない!時間が無いのだろう?」
今度は急き立てんばかりに、強く言った。グレミーは完全に「?」顔だったが、本当に時間が無かったので、慌てて店を出た。
「そうそう。二人に何があったかは知らないが、仲良く店番するんだよ。『兄弟仲良く』だ」
グレミーが出際にそう言った。
グレミーは、何故そう言ったのか思い当たる‘ふし’があったからだ。
プルツーがプルに対して、トゲトゲしていたからである。二人との付き合いが長いから、グレミーには何となく分かったのである。
(どちらかが「トゲトゲ」していれば、ほとんどケンカ)・・・もうこれは定説(死語、笑)である。
「あたしたち、兄弟じゃなくて姉妹だよ」
揚げ足をとってプルがグレミーに言ったが、グレミーにはもう聞こえていない。‘じゃあ’と言って手をあげて店を出ていた。
今日のニュータイプは、いやに静かだった。何故かお客の数が少なかった。
しかし、彼女達にとってそれはとてもラッキーなことだった。なぜならそれは、公然と仕事をサボれるからだ。(笑)
だが、今回はいつも(?)と違う。本当にお客が入らないのだ。
二人の雰囲気をお客が感じているのか不明だが、プルとプルツーの空気が‘ピリピリ’しているのだ。
隠そうとしても、どうしてもそれが洩れてしまうのが客商売なのである・・・。
「ねぇ。プルツー・・・。昨日のプリンのことなら謝るからさ・・・」
グレミーの言ったことは、当たっていた。二人の仲には、やはり何かあったのである。プルの口調から察するに、自分がプルツーの取って置いたプリンを食べたのであろう。
しかし、グレミーはこんな内容でケンカしているとは、夢にも思っていないことだろう。
所詮、兄弟(姉妹)のケンカとはこんなものである。(笑)
お客が一人も居なくなったところで、突然にプルがプルツーに言った。
洗い物をしていたプルツーは、聞こえていたのだが完全に無視をしていた。
「ねぇ〜〜〜、プルツーったら〜」
プルは駄々をこねた感じでプルツーに言ったが、さっきと同じでプルツーは無反応である。
‘ガシャン’
プルツーは、洗い物をしていた手を急に止めたかと思うを、皿やコップを流し場に叩き付けた。
幸い、水が張っていたため皿やコップが割れることが無かったが、その音は大きかった。その音で、プルが少し驚き‘ビクッ’と震えた。
「プルツー・・・。どうしたの?」
ちょっと恐々としながら、プルは聞いた。今まで何度かプルツーとケンカをしたが、こんなに怒っているプルツーを見たのは初めてだった。
「お前は・・・」
(え?!)
プルツーの‘「お前は・・・」’の言葉にプルは、また驚いてしまった。
怒ったときのプルツーは、確かに口が悪くなる。いつもの強気な性格がそのまま口調に反映してくるのだ。プルは、そんな口調は姉妹ケンカでなれてはいたのだが、今回のその台詞はいつもの口調とは全然違っていた。
「お前はいつもそうだ。あたしのものを、すぐに取ってしまう。プリンやゼリー・・・あたしのおやつ・・・」
そう言っている、プルツーの体は少しではあるが怒りでブルブルと震えていた。
「ごめん・・・」
プルは、両手を合わせて頭を下げた。顔を上げてプルツーの表情を伺ってみたが、怒りが収まった気配はない。それどころか、ますます震えがひどくなっているようだった。
(こ、こわい〜)
タラリと冷や汗を流して、プルは思った。久々に見た、プルツーの『本気モード』である。
「おやつぐらいなら、まだいい。あたしがジュドーといる時も、横から‘サッ’と現れるし、この間は、あたしがグレミーといるときに・・・」
そこまで言って、プルツーは話すのを止めた。
「今、あたしは何を・・・?」
プルツーは、自分が怒りに身をまかせて思わず言ったことに、戸惑いを感じた。
「え?グレミーがどうしたの?」
プルにもそこまでは聞こえたらしい。
「プルツー、どうしたの?今日はいつものプルツーじゃないよ」
心配そうにプルが言った。
プルツーの顔は、血の気が引いたように、真っ青になっていた。
プルツーは、自分の言ったことを冷静に考えて、理解した。
そしてそのことに気が付くと、慌てて裏口から店の外に飛び出した。
「プルツー!? どうしたの一体〜」
何が何だか、プルには分からなかった。ただ一つだけ分かったことがある。それは・・・
「お店、どうするのよ〜」
―あとがき―
久々に書きました。本当に久々です。今回、この話も、また別の話を書いている途中に思いついた話です。
その「別の話」というのが、第4話の話なのですが・・・。(爆)
その4話のキャラクターって・・・とにかく動いてくれないっす。(爆×2)
とキャラクターの責任にしてもしょうがないので、頑張って書き上げます。
今回、話が長くなりそうなので、2部構成にしました。話はまだ続きます。もうちょっとプルツーのことを書かないとね・・・。
しかーし、ここまで書いて、自分が恥ずかしくなりました。 いや、話をホームページに載せることではなくて、『話の内容に』です。
恥ずかしいことには、慣れていますが(笑)、このような内容の話を書くのはちょっと・・・。
経験無しで書くのは、やはり無謀かもしれませんが、思い浮かんだんですもん。(開き直り、爆)
さて、この話の続きを書きますか。
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