富山県富山市八尾町黒田に鎮座する杉原神社は、3社ある杉原神社の中では最も境内地が広く、鎮守森も鬱蒼としている。富山市八尾町に鎮座する杉原神社はこの一社のみであり、他二社は富山市婦中町に鎮座する。また、神職が常駐しているのもこの黒田の杉原神社のみである。神職として常駐している杉原社家は田屋の杉原神社にも奉職している。
境内には杉の大木が林立し、古社の風格を滲ませている。近年の旱魃により数本の杉が枯れ、それ以前と比べると閑散とした感が否めないが、それでも厳粛な雰囲気は損なわれていない。
社殿は昭和61年11月に新築されたものであり、いまだ檜の香りが漂う。神殿は天保14年建造の流造(ながれづくり)。拝殿は神殿を完全に覆う形の権現造(ごんげんづくり)である。写真の東鳥居は平成元年4月建立。夜、鳥居両脇の外陣灯籠に灯が点ると、幻想的な佇まいを見せる。現在、写真にも見える玉垣が延び続けていることからも、氏子崇敬者たちの深い信仰を集めていることが窺える。
南鳥居は大正時代に建立されたものである。鳥居の両側に見える樹木は「真榊(まさかき)」である。一般的に見られる榊とは異なり、葉が厚く大きい。これは先代の宮司が伊勢の神宮から苗を分けていただいたものを増やしたものである。黒田、ならびに田屋の杉原神社の祭礼では、この真榊の玉串が奉奠される。写真には社殿に続く長い参道が見えるが、この南参道が古来よりの参道である。境内参道の入り口両脇には大きな岩境(いわさか)が一対ある。祭礼の際には、この参道の両側に計12基の灯籠が立ち並び、灯が点される。春の例祭の宵祭りには、そこを黒田青年団の若人らの大和獅子が笛太鼓の音とともに練り歩いてくる。
右の写真は南から見た黒田杉原神社の遠景。手前から鎮守の森へと続く長い南参道が見える。この参道は農繁期には農道としても有効に利用されている。また、左端に見える「合場川(あいばがわ)」は、蛍の生息でも知られている。毎年6月には、数え切れないほどの蛍の乱舞を目にすることができる。この写真に写っている場所も見所のひとつである。ちなみに、源氏蛍と平家蛍の両種が共存しており、早い時期には源氏蛍が、遅くなると平家蛍が多く見られる。
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