今年になって商工会に勤めている同級生から、「八尾町工場協会の30周年記念事業に200万円の予算があるんだけど、もしジャズコンサートをするって言ったらこの予算使って引き受けてもらえる?」っていう打診がありまして、、、日頃からあまり物事を深刻に考えない性質の私は渡りに舟とばかり、二つ返事でOKしてしまいました。
 「ところで、日野皓正さんちゃ、呼べんもんかねぇ??」「なんで??」「有名だし、荒井文扇堂の社長と友達だ言うとったにか・・。」

 荒井修さんは浅草で文扇堂という扇子屋さんを営んでらっしゃる職人さんで、おわらが好きで毎年八尾に通って来られ、八尾町のいろんなイベントにも参加していただいている方です。一昨年、私達が「MOST、、MOST、、」とチケットを売り歩いている丁度その頃、八尾で行う扇子の個展の準備をされている時にお話をする機会がありました。「ジャズと言えば私は日野皓正さんと懇意にしててね、一度八尾にも連れてきたいと思っているんですよ。」と、おっしゃっていたのを思い出しました。
 日野さんを呼ぶなんて夢のまた夢、、何かのきっかけで来てもらえたらそれはすごいことだろうなぁ〜ってその時はそう思っていたのです。

 the MOSTのバンドリーダー多田誠司さんとピアノの石井彰さんが「日野皓正クインテット」のレギュラーメンバーであることから、早速多田さんにメールで相談してみました。「the MOSTのゲストに日野皓正さんってのは可能でしょうか?」「それだったら日野皓正クインテットでやるのが一番良い形になると思うよ。」
 マネージャーさんの連絡先を教えてもらい、早速お願いしてみました。超人気グループのスケジュールが思い通りになるはずないよな、、、と半ば諦めていたのですが、きっと多田さん、石井さんからの強い後押しがいただけていたのでしょう、10月18日(土)という気候も曜日も良い日に来てもらえることになったのです。これはすごいことになりそうだ!!、・・どうしよう、、、。八尾のジャズイベントに不可欠なのは小川もこさん、すぐに大島さんに連絡して、もこさんのスケジュールを押さえてもらい、準備にとりかかりました。

 周年記念事業、すなわち地元へ何らかの形で還元することを目的とするイベントという性格上、できるだけたくさんの人にこのコンサートを観てもらいたいという工場協会の希望と、出来るだけ多くの人に最高の生のジャズを味わってもらいたいという私達の意見が合致し、場所を町で最も大きな屋内施設、八尾スポーツアリーナに設定しました。
 ステージを組んで、タワーを建てて、PA、照明、使用料・・諸々の見積りを出して、出演料、交通宿泊費を加え、そこから協会にご用意いただく予算を引いて、、さて、いくらのチケットを何枚売らなければならないのか??? 私達が出した答えは、4,500円のチケットを1200枚。。。今までとはワケが違う、、新たな挑戦が始まりました。

      荒井 修さん    第1回実行委員会   八尾スポーツアリーナ

 今回のポスターは、ある程度の予算が見込めたのでプロの方に作ってもらいました。トランペットをイメージした図案でとても良い仕上がりになったと思います。ポスター・チラシの完成を待って、第一回の実行委員会が7月14日に行われました。過去のライブに来てアンケートに住所氏名を残してくれた人、180人くらいにDMを郵送しました。
 実行委員会で目標のチケット販売数を告げた時は、さすがにちょっと退いたみたいでしたがチケットの一般発売日を7月24日と決めて各々が持ち帰りました。
 チケット発売日の7月24日、フォーミラの生放送に出演し、イベントの告知をさせてもらいました。その後順調に予約が入り、300枚近くがあっという間に売れました。 しかし、それ以降のチケット販売が思うように伸びず、実行委員長として泣きの行脚が始まったのでした。富山市内のジャズのお店を全部回ってチケットを置いてもらうようにお願いし、メーリングリストを駆使して知人、友人に何度も案内したり、、。
 八尾の祭り、おわら風の盆が終わる9月初旬までには少なくとも1000枚は売っておきたいという目標を持っていましたが、多く見込んで700枚がやっと、という状態・・。
 あと1ヵ月半で500枚、、どうしたら売れるのだろう? 悩んでばかりいても仕方がない、行く先々へチケットとチラシを持って回り、PRに努めました。
 一ヶ月前の9月18日に町内全域に新聞折込みを入れましたが、問い合わせ等の反応はなく、県内で行われるいろんな会館やホールに出向き、チラシの折込みを依頼、実行委員各々に奮起を促す日々が続きました。工場協会の担当者から役員の方へチケット販売が不調だという現状を説明してもらい、当日配る予定のパンフレットにそれぞれの広告を掲載してもらえるようにお願いしました。どこかで必ず火が点くと信じていました。

 公演まであと2週間となった10月3日、石川県小松市公会堂で日野皓正クインテットのコンサートが予定されているというので、実行委員数名と大島さん、そしてもしかしたらインタビューが撮れるかも、、とかすかな期待を持ってCATVのカメラマンも伴い小松市へと向いました。
 実際に初めて体験する日野皓正クインテットは本当に素晴らしかった。こんなに感動したことあったろうか、、と思えるくらいの衝撃でした。一流の上を行く超一流とは当にこのことであろうと思われ、、、。終ってからもずっと興奮状態が続いていました。


  小松市公会堂にて 日野クインテットメンバー

 公演後のサイン会の間、マネージャーの田渕さんにチケットの売れ行きがイマイチだということ、初めて日野クインテットを体験した今、その素晴らしさにびっくり!!絶対に八尾公演を成功させなくてはいけないと改めて思ったこと、出来れば、日野さんから八尾の人達へのインタビューを取らせてもらって持ち帰りたいと、図々しいお願いをしましたが、快く承諾してもらって、日野さん、多田さん、石井さんからのメッセージを持って八尾に戻ってきました。

 この後の2週間、間違いなく私の目の色は変わっていました。「会場一杯の観客で迎えなくては日野さんやメンバーに申し訳ない」「何としても成功させたい」チケットを置いてもらっているお店へ再度足を運び、興味がありそうな人に再度チケット購入を勧めたり、一週間前にもう一度FMとやまさんに時間をとってもらっての生出演があり、、そうこうしているうちに実行委員からも手持ちチケット完売の連絡や追加注文が入ってくるようになっていました。
 また、小松で日野クインテットの演奏を聴いた大勢の高校生の興奮冷めやらぬ様子が頭から離れなかった私は、教育長に町の中学生を是非招待したいと申し出ました。最初は観客を入れる予定でなかったスペースがあったので、採算は別としても子どもたちに観せてやりたいと思ったのです。

 公演日の3日前、10月15日、採算の取れる最低ライン1100枚の販売目標にようやく到達しました。
 この夜、第3回の実行委員会が行われ、スタッフの配置、タイムスケジュールの確認をし、あとはパラオへ取材旅行へ行っていてコンサート当日帰国、八尾入りするという超ハードスケジューラー、小川もこさんの無事到着を祈るだけということになりました。